まんがと図解でわかるニーチェ : 「超人」「ニヒリズム」…ニーチェの思想が2分で理解できる!

キーフレーズ

ニーチェ ツアラトウストラ 人間 ルサンチマン 自分 価値観 遠近法 私たち 力への意志 世界 キリスト教 ニヒリズム 存在 価値 権力への意志 意志 人生 一つ 考え 永遠回帰 哲学 道徳 意味 ーチェ 生きる 超人 畜群 ヨーロッパ すべて 自分たち 哲学者 思考 考え方 禁欲主義 奴隷道徳 思想 生き方 神は死んだ 無価値 肯定 生き イメージ イデア 自ら 欲望 隣人愛 行動 批判 キリスト教道徳 感情 否定 善悪 理想 生きること 道徳の系譜 社会 できる エリーザベト 西洋哲学 悪いこと キリスト ローマ人 本質 言葉 自分自身 生まれ 真理 イエス 物事 認識 ドイツ 考える 支配 必要 善悪の彼岸 ローマ帝国 道徳哲学 プラトン 知恵 the nihilism 同情 正午 あり方 第三部 主張 他人 相手 ディオニュソス レホート 自然科学 君主道徳 love ヒトラー

目次

, チ目次 & 本書の読み方 「生」の価値を教える哲学者のことば わ章一一ーチェってどんな人 ? ー生い立ちと思想の要点ー 哲学の初心者でも安心 ! 2 分でわかるニーチェの思想 ◎まんかでわかるニーチ、の生い立ち「ニーチチ 0 てどんな人 ? ニーチェ哲学はじめの一歩ニーチェがわかる超重要キ 1 ワード・ ニーチェに関するおもな出来事 7 世界はすべて「解釈」でできているー遠近法的思考ー ◎まんがでわかる速近法的思考人は世界を「速近法」で見て、考えている ! ①人間の認識のあり方とは ? 人は「遠近法」でものを見て、感じて、行動している ②西欧社会の遠近法的思考ー「常識」も遠近法的思考の一つにすぎない ③西欧社会の遠近法的思考ー 2 「物事には本質がある」という考え方は絶対ではない・ ④西欧社会の遠近法的思考ー 3 「自我」なんて実はただの思い込みでしかないー ⑤「、なければならない」という制約「自分探し」は私たち自身を苦しめてしまう・ 50 46 イ 2 38 3 イ 30 20 18 1 70 8

章 2 世界や人生に「意味」なんてないールサンチと = ヒリズムー 第をまんがでわかるニーチ、の道徳批判どうして「悪は栄える」の ? ①道徳の価値を問い直す人のために行動することは奴隷の道徳だ ! ②キリスト教道徳とルサンチマン自分たちを正当化するために憎いやつを「悪」にする ③ルサンチマンと価値観の変化「善」は弱い集団の利益を守る口実にすぎないー ④科学の発展で起こった「ニヒリズム」禁欲主義的な生き方は無意味だ ! ⑤「神は死んた」が意味するものカントの考えも道徳哲学も無意味だ ⑥ニ 1 チェのキリスト教批判の誤りニ 1 チェのキリスト教批判は鵜呑みにしない 日年表でみる西洋哲学古代 5 現代まで哲学の系譜を振り返ってみよう 章 3 な世界を乗り越えて生きるー超人ー 第をまんがでわかる超人思想究極の一一ヒリズムを乗り越える「超人」とは ? ①ニヒリズムの先に見えてくるもの未来は過去であり過去は未来である ②すべてを等しく照らす真実の光ニヒリズムは光に満ちた素晴らしい瞬間 ③「人間」はまだ進化の過程である「超人」としてニヒリズムを乗り越える・ ④気高く生きるならなれ合うな同情は軽蔑であり隣人愛は不十分な自己愛だー ⑤ニヒリズムを克服する勇気全世界を肯定する強さを身につければ人生は変わる ⑥『ツアラトウストラ』でニ 1 チェが語ったこと「超人」という新しい生き方のススメ うの 8 イ 80 7 68 石イ 52 120 〃 112 708 10 イ 100 タ 88 5 8 5

ストーリーまんが・人物紹介、・ ! 第「、 のい 03 まどか とある大学に通う社 会学部の女子大生。 楽勝と聞いて選択し 一般教養の哲学のク ラスで落第の危機に。 単位のためにレポー ト提出の課題を出さ れ落ち込む。 新知恵 SNS サイトでまどか と知り合った男性。 「ニーチェ」に漢字を あてたハンドルネーム の通り、哲学に造詣 が深く、まどかのレポー トのためにアドバイス する。 かえで まどかの親友。しっ かり者で聡明。レポー トで助けを求めるまど かを突き放す友達思 い ( ? ) の性格。 章 世界と自分をすべて受け入れるーカ、の意志ー 第をまんがでわかる「カ、の意志 . 世界は「カ、の意志 , で成り立 0 ている ①ニ 1 チェが見た生の真実より強く、より高みへ生を突き動かす力への意志 ②力への意志はどこで働いているのか ? 自然界の法則私たちの生活から見えてくるカへの意志 ③感情もまたカへの意志であるこころの中でも力への意志がせめぎ合っている ④現代人を救うカへの意志自分を愛する人こそが他人を愛せる ⑤ニ 1 チェから私たちへーⅡもっと喜ばうもっと楽しもうもっと幸せになろう ⑥ニ 1 チェから私たちへー 2 自分の運命を愛しなにが起こっても大らかに受け入れよ 〈ページさくいん付〉ニーチェ哲学がわかる用語集 代理講師 専任教授の代理とし て哲学の授業を担当 した非常動講師。採 点に厳しく、一般教 養だろうが容赦なし。 本書の読み方 Q 0 t 血れ ーチェの著作から関連する言葉を引用しています。 K 0 その節で関連性のある重要なキーワードを挙げてい ます。また、本文中では太字で示してあります。 三加主張 その節で紹介したニーチェの考えを整理しています。 冖本文の重要な部分はハイライトしています。 ※各記事の引用個所は、おもにちくま学芸文庫の当該書籍を出典とし ています。 ※本書では監修者のアドバイスをもとに、現代人が生きるうえで参考 になる考え方を中心に、ニーチェ哲学の特徴と魅力を一部大胆に、わ かりやすくまとめています。 0 石 1 イ 2 お 8 おイ 0122 121 6

ーチェ哲学 す 厭世主義〈えんせいしゅぎ〉↓ あ ま the ete 「 nal 「 etu 「 n 、、 die ewige Wiede 「 kunft des GIeichen ℃ ess 一ョヨ、、 Pessimismus あ 「時間は無限であり、物質は有限である」という前提人生や社会にはよいことや幸せよりも悪いこと、不て - き勲場アポロン〈あばろん〉↓ 一三ロ に立ち、万物は、同じ順序と脈絡に従って、永遠に幸の方が多く、肯定できるような価値はない、とす A00 = 0 、、 A00 = on み の る人生観や哲学の立場。 くり返されるというニーチェの世界観。ニーチェは っギリシア神話に登場する、光明、芸術、医術、予言 ジ 永遠回帰を「到達しうる最高の肯定の形式」と述べた。 などの神。ニーチェはこれを理性的な秩序のシンポ る脈 紋ルとして、狂騒や陶酔を象徴するディオニュソス的キリスト教的な目的のある直線的な歴史観や、「歴史大いなる正午〈おおいなるしようご〉・æ••- 。。 も お は相反する概念や事象のせめぎ合いで進んでいる」 the g 「 eat コ 00n 、、 de 「 g 「 03e Mittag くつがえ 力。な価値観と対置し、人間の生のあり方について考え れ とするヘーゲルに始まる弁証法的な歴史観を覆そう ニーチェが『ツアラトウストラ』でイメージした、 触 で した試みであるとも解釈できる。永劫回帰とも。 ニヒリズムが徹底された状況。太陽が真上に達し、 ど わ , 森羅万象に等しく光が当たることですべての差異が イエス・キリスト〈いえ ! きりすと〉↓ 8 文 本 Jesus Christ 、、 Jesus Christus なくなる世界のイメージ。 エリーサベト〈えりーざべと〉↓ 120 は で歳ごろからパレスチナで宣教を始め、ペテロなど 、 Elisabeth E Nietzsche ) ン 人の弟子と活動を続けたが、ユダヤ人に捕らえられ、 ( 18 4 6 5 193 5 ) ニーチェの妹。熱狂的な兄 照 参 ローマ総督により十字架刑に処せられた。その後、弟の信奉者で、 1894 年にニーチェ資料館を開設。 の 子たちにより、イエスが救い主 ( キリスト ) であった 三ロ 用 とする信仰が確立し、原始キリスト教の宣教が開始支えた兄思いの半面、ニーチェ死後はヒトラーに接 限 された。ドイツ語の読み方に準じて「イエス」は「イ近し、ナチズムがニーチェ思想を自らを正当化する階序〈か〔じよ〉↓ 2120 ほ・つしょ 0 「 de 「 Of 「 ank 、、 Rango 「 dnung 工ズス」とも読む。 理論として利用する活動を積極的に幇助した。 示 表 人間の強さ、高貴さのランク。ニーチェは、人間に は強さ・弱さのランク ( 階序 ) によってふさわしい イデア〈いであ〉・ 遠近去的思考〈えんきんほうてきしこう〉↓収、。 idea 、、、 ldee 道徳があるとした。 表 pe 「 spectivism 、、 Pe 「 spektivismus 減プラトン哲学で、時空を超越した非物体的、絶対的ニーチェが指摘した人間が根本的に備えているもの の な永遠の「真・善・美」の存在。それらを成立させ の見方、とらえ方。自分に近いものは重大に見え、快楽主義〈か〔らくしゅぎ〉・ hedonism, Epicu 「 eanism 、、エ edonismus, Epiku 「 eismus ※る超越的な根拠のこと。物事の本質。 遠いものは小さく重要でなく見えるとし、その見え 快楽の追求こそが善であり、道徳の基準であり人生 方の内容は当人の欲望によって決まる、とする。ニー 運〈叩愛 0 つんめいあい〉↓ P150 チェは人間にとって遠近法的思考は、「生の根本条の目的であるとする考え方。超人的な生においては、 love 0 → fate 、、 amo 「→ a せ ( ラテン ) 快楽主義は肯定される価値観である。 件」であるとした。 人生のすべてを運命ととらえ、その全部を受け入れ 科学〈かがく〉・ る心の態度。ニヒリスムにのっとれば、すべては無逞人愛〈えんじんあ〔〉↓ P108 science 、、 Wissenschaft 価値であるのだから、人生に「、 しい」「わるい」の furthest love 、、、 Fe 「 nsten- 匚 ebe 世界・宇宙の事象を体系的に記述しようとする学問。 区別はない。出来事を選んで受け入れたり否定する ニーチェが隣人愛の代わりに人間が抱くべきとした ことはできない。人生は、すべて肯定するか、すべ愛。最高の人間たる超人を未来に求め、焦がれる希望人文科学、社会科学なども含まれるが、狭義には自 て否定するかのどちらかしかない 然科学をさす。自然科学は、現象の原理を解明し、 の愛であり、これこそが真の人間愛であるとされる。 再現可能な条件を解明することを目的としている。 くべージさくいん付〉 一三ロ あ行 か行 わイ

仮象〈かしようー 客観〈きや 0 かん〉↓ 4 『権力への意志』〈けんりよミのいしー the Will to the Powe 「、、、 die Wille zu 「 Macht appea 「 ance 、、 Schein object 、、 Objekt 真理に対する現実のありようのこと。真理の世界があ主観が観察、認識などを行う対象。主観とは別に存 19 01 年、妹エリーザベトが発行したニーチェの ると仮定して、物事の本質的なあり方を実在 ( 本当の姿 ) 在する自分以外の物事。 遺稿集 ( 年に改訂版が 2 巻で刊行 ) 。「カへの意志」 主観 とすれば、現実は本質的な価値を満たし切れていない に基づく生のありように新しい高貴な人間 ( 超人 ) 仮の姿 ( 仮象 ) となる。 の可能性を見る。ただし、文章自体はニーチェの思 想に基づくが、構成において意図的な編集が介在し キリスト教〈きりすときよう〉↓ 4 6 8 Christianity 、、 Christentum ているため、一貫した書籍としての価値については、 神は死んた〈かみはしんだ〉↓ GOd is dead. 7 Gottist tot. イエスをキリスト ( Ⅱ救世主、メシア ) と信じる宗教。疑問視されている。 『ツアラトウストラ』をはじめ、ニーチェが著作の ユダヤ教を母体として 1 世紀中頃、パレスチナに起 中で盛んにくり返したフレース。キリスト教的価値 こり、厳しい迫害を経て 4 世紀初頭、ローマ帝国の ~ 局具な道徳〈こうきなどうとく〉↓ P104 観や西洋思想の根底にある「神」「善」「天国」「真理」国教となった。ローマ・カトリック教会・東方正教 noble mo 「 ality 、 adlige MoraI 「理想」などの絶対的な価値基準は、もはや存在し会・プロテスタント諸教会などの流派に分かれなが 強者が自らを「よいもの」ととらえたときに生じる という意味が込められている。ニーチェは、 ら、欧米を中心に世界各国に教徒を増やす。仏教、行動の規範。肉欲、支配欲、我欲といった従来の道 イスラム教と並ぶ世界三大宗教の一つ。 真の価値基準は、「神」「天国」「真理」ではなく、 徳では「悪」とされる欲望は、すべて肯定される。 自分が生きている現実の「大地」に置くべきと主張 逆に、従来は得とされてきた同情は弱さとして否定 した。 される。 禁欲主義〈きんよくしゅぎー asceticism 、、 Asketismus 力、ノト〈かんと〉↓ 所有欲、支配欲、性欲などを我慢して生きる生き方。古典文献学〈こてんぶんけんがく〉・ ー、、一 . Ka コ ~ ( 一 7245 一 804 ) キリスト教では理想的な生き方とされたが、ニー philology 、、 PhiIoIogie ドイツの哲学者で近代哲学の祖とされる。理性で認チェはこれを、強者が力を発揮することを望まない 古典的なテキストを社会的、文化的、思想的資料と 弱者の畜群本能に由来する、とした。 識できる限界を批判的に考察する一方、神・自由・ して分析的に読み解く学問。 ニーチェは囲代にギリ 善などの抽象的な価値の根拠を明らかにしようとし シア古典の文献学者として論壇でデビューしてい る。 形而上学〈けいじじようがく〉↓ metaphysics 、、 Metaphysik 現象としては認識できない抽象的な価値 ( 真・善・ 君主道徳〈きぞくどうとく〉↓ 美など ) や超越的な存在 ( 神・魂など ) の価値や根拠、 maste 「 mo 「 ality 、、エ e 「「 enmo 「 al 戸ー・イレ 一三ロ〒て . 在を肯定し、その行動や考え方を「よいもの」とすしようとする学問。 ることで生まれたとする支配者の道徳。同様の意味 「取後の審判〈さいごのしんばん〉・ the Last Judgement 、、 das J 〔 ]ngste Gericht でニーチェは貴族道徳という用語も用いている。主 ~ 云術〈げいじゅっ〉・ art 、、、 Kunst キリスト教の終末論において、神が歴史の最後に人 人道徳とも。 美を追求し、具体化しようとする営み。絵画、彫刻、 間にくだす審判。歴史に生きた人間は全員が裁かれ . 奴隷道徳 建築、音楽、演劇など。ニーチェは特に、情動を動て天国・煉獄・地獄行きが決められる。そのため人 的に表現する時間芸術ともいえる音楽を愛した。 間は、生前は「善い」人生を送らなければならない とされる。 さ行 5

ンヨーベンハウアー〈しょーベんはうあ↓・ 実存主一莪〈じっぞんしゅぎ〉↓ existentialism 、、 Existentialismus 山上の垂訓〈さんじようのすいくん〉・ ー、、 A. Schopenhaue 「 ( 一 788 5 一 869 the Se 「ョ0n 0 コ the Mount 、、 die Be 「 gp 「 edigt 人間の存在そのもの ( 実存 ) を中心に位置づけて世ドイツの哲学者。厭世主義 ( ペシミズム ) を説いた 『新約聖書』の『マタイによる福音書』 5 章でイエス・ 界のあり方を説明しようとする哲学の立場。実存主代表的論者。世界とは人間の自我の表れであり、人 キリストが行ったとされる説教。「こころの貧しい 間に本来的にある欲望は常に満たされないので人生 義は、人間を理性 ( 精神 ) と肉体で分離できる存在 人たちは、さいわいである」などのフレーズで知ら は苦しく不幸に満ちている、と説いた。ニーチェは とみなすのではなく、感じ、行動する全体としてと れる。 らえ、人間がみずから選択し行動することに重要性ショーベンハウアーを自身の哲学を準備した人物と を見いだす。ニーチェの哲学は実存主義の源流にも位置づけた。 自我〈じが〉↓貶、 139 位置づけられている。主唱者にハイデガー、サルト self 、、 lch. Selbst メルロⅡポンティなど。 真理〈しんり〉・貶 人間において、知覚、思考、意志などの主体とされ truth 、、、 Wah 「 heit プラトン哲学を根底に、物質や事象、生物、概念な るもの。外界と区別して意識される。自分自身。の終末疆〈しゅうまつろん〉・ こと。ニーチェは自我の存在は虚構であるとみなし ど物事すべてに存在するとされる本質の姿。 eschatology 、、 Eschatologie 世界の歴史には終末がある、とする宗教思想。ユダ ヤ教・キリスト教が代表的。キリスト教の終末論で生の哲学〈せいのてつがく〉↓ 2 自己愛〈じこあい〉↓ P108 、 142 philosophy Of life 、、 Lebensphilosophie は、すべての人間は一度復活し、神の裁き ( 最後の れんごく self-love 、、 Selbstliebe 四世紀後半から囲世紀初めにかけて、生きている生、 審判 ) を受けたのち、天国、煉獄、地獄へ振り分け 自分で自分を愛すること。自分で自分の価値を認め られる。 体験としての生の価値をそのまま受け止めようとし ること。超人は自分の価値の根拠を他人や世間の価 てヨーロッパで展開された哲学の流れ。代表的な哲 学者に、ショーベンハウアー、ニーチェ、ジンメル、 値観に求めず、自己愛だけで 100 % 自分を満たす主観〈しゆかん〉・ ことができる。ニーチェは、自己愛で満たされた者 ヘルクソンなどかいる subject 、、 Subjekt だけが本当に他人を愛することかできる、と考えた。 認識、思考、行為する人間の主体。主観は人間存在 の中心であり本質であるとされる。 西羊析ロ学〈せいようてつがく〉↓ 自己中、じ主〈じこちゅうしんしゅぎ〉・ P142 weste 「 n philosophy 、、 westliche PhiIosophie 類〕自我対〕客観 egocentrism 、、 Egoismus 西洋を中心に展開された哲学全体のこと。古代ギリ シアから中世ヨーロッパのキリスト教世界を経て、 自分をもっとも価値があると位置づけ、自分の感情、十戒〈じ。かい〉↓ 欲望、利益を最優先する考え方のこと。利己主義。 the Ten Commandments 、、 die Zehn Gebote 近世以降世界に広まり、多彩な発展を遂げてきた。 ニーチェにとっては、超人の生き方こそ自己中心主『旧約聖書』でエジプトから脱出した同胞 ( イスラ 10 0 義であり、人間らしい生き方である。 エル人 ) を代表して、モーセが神から授かったとさ 釜「・悪〈ぜん・あく〉↓ 6 good ・ evil 、、 gut ・ bÖse れる規律。偶像崇拝の禁止、安息日の遵守、偽証、 よいことと悪いこと。ニーチェはヨーロッパ社〈Äに 殺人、盜み、不倫の禁止などの決まりごとがある。 おける善悪の価値観の起源はユダヤ教・キリスト教 徒のルサンチマンに由来すると主張した。 15

超人〈ちょうじん〉 析ロ学〈てつがく〉・ 10 0 10 4 11 2 philosophy 、、 PhiIosophie Supe 「 man 、、Übe 「 mensch 世界・人生などの根本原理を説明しようとする知の 人間を超越した人間の最高のあり方のイメージ。徹営み。人間の理性や物事のとらえ方 ( 認識 ) 、「理解 底したニヒリズムの世界において、内なる欲望・情するとはどういうことか」といった問題を深く問う 動を受け入れ、価値を見いだし、行動できる人。超ため、あらゆる学問分野の基礎ともいえる。ギリシ Ø 0 QC ・ー 人は価値の根拠を純粋に自身の内で働くカへの意志 ア語の QC•— 0 Ø 0 QC ・ー ( にのみ求める。力への意志に染まり、欲望に染まっ ( 智 ) を QC•- ー•- c ( 愛する ) 」が語源。 て強く生きる人のことである。 119 『善悪の彼岸』〈ぜんあくのひがん〉↓唄 同情〈どうじよう〉↓ 2108 Beyond GOOd and EviI 、、 Jenseits von Gut und BÖse pity 、、 MitIeid 『ツアラトウストラ』〈つあらとうすとら〉 1886 年発行。リ 畠題「将来の哲学への序曲」。キ↓収唄 105 、 ニーチェがもっとも嫌った感情。同情には相手を低 リスト教道徳や民主主義が人間を畜群にしているこ Thus Spoke Za 「 athust 「 a 、、 Also sp 「 ach Za 「 athst 「 a く見て、自分を高めようとする卑しさがある。同情 とを検証し、批判している。 18 8 3 5 18 8 5 年にかけて 4 部構成で出版さすることは、相手を軽蔑することに等しい。同情は れたニーチェの代表作。主人公ツアラトウストラが だれもが思わず抱いてしまう感情でもあり、超人に 自らの教えを説いて回るという物語形式でニーチェ至るために克服するべき最大の難関である。 思想が語られている。 道徳 ( モラル ) 〈どうとく〉・ 8 mo 「 ality 、、 MoraI 1 アイオニュソス〈で〕おにゆそす〉↓ 1 ( 0 0 力への意志〈ちから〈のいし〉↓収 122 、 Dionysus 、、 Dionysos 善悪の基準に従って人間が行動しなければならない とうすい the will → 0 the powe 「、、 die Wille zu 「 Macht 古代ギリシア神話に登場する酒の神。陶酔、狂騒を とされる規範。ニーチェは道徳も遠近法的思考に由 ニーチェ思想の中心をなす概念の一つ。すべての存本性に持つ。ニーチェは人間本来の生のあり方を来する一つの考え方にすぎないとし、道徳にもさま 在は自らの一つちに、より強く、より大きくなろ一つと ディオニソス的なものであると考えた。 ざまな種類があり得るとした。 意志する能動性としてカへの意志を内包しており それによって絶えず自己を乗り越えようとする。 デカダンス〈でかだんす〉・ 道徳哲学〈どうとくてつがく〉祐 ニーチェは、生の本質はカへの意志であるとし、世 décadence ( 仏 ) 、ー mo 「 al philosophy 、、 mo 「 alische Philosophie 界はカへの意志のせめぎ合いで成立しており、諸活 フランス語で「退廃」の意味。ニーチェは、社会に神の存在を持ち出さずに善・悪に絶対的な価値があ 動すべてはカへの意志で説明できる、と考えた。 堕落的、退廃的な雰囲気 ( デカダンス ) が広がってることを論証しようとする哲学。一般的には倫理学 いるのは、社会が劣化したのではなく、ニヒリズムの一分野とされる。 畜群本能〈ちくぐんほんのう〉・ の必然的な結果であるとした。デカンダンスによっ herd instinct 、エ erden lnstinkt てニヒリスムが生まれたのではなく、ニヒリズムが 畜群とは、群れる弱者のことを指すニーチェの言葉。 デカダンスを呼んだ。デカダンスは、畜群本能を持 畜群は自らの弱さを正当化するために、「人間はみ つ人々が利他主義的で弱者を重んじる道徳を打ち立 んなのために行動しなければならない」などの価値 てたことに由来する。平等を重んじ、誇張、不調和 観を浸透させた。これに本能的に ( Ⅱ無批判に ) 従不均衡を嫌う禁欲主義が広がることで、必然的に起 う行動原理をニーチェは畜群本能と呼び、軽蔑した。 こった生の沈下であり腐敗であるとした。 た行 13 0 、 1 ( 0 8 757

11 C) 『道徳の系譜」〈どうとくのけいふ〉↓ the GeneaIogy of MO 「 als 、、 Zu 「 Genealogie de 「 MO 「 al 1887 年発行。副題「論争の書」。『善悪の彼岸』 、背後世界〈はいごせかい〉・ backwo ュ d 、、エ inte 「 welt の補遺として発行された。道徳批判を中心テーマ として、「善悪」の価値観の起源、人の「やましさ」 0 「 / 、、 \ ー。 ~ キリスト教や哲学が前提する「真の世界」を指した ニーチェの言葉。背後世界の存在を前提すると、両 の由来、キリスト教の禁欲主義がもたらしたもの 者とも必ず「現実は理想よりも劣っている」という について語られている 認識から、「人間は理想を目指さなければならない」 という価値観が生まれる。ニーチェはこれを批判し、 奴隸一揆〈どれいい。き〉↓ 背後世界 ( 真の世界 ) は虚構である、とした。背面 the revolt of the slaves 、、、 Sklavenaufstand 世界とも訳される。 ニーチェ哲学で、弱者がルサンチマンから君主道徳 における善悪を逆転し、強者を悪、弱者 ( 自分たち ) を善と位置づけた価値観、道徳観を打ちたてること。 ニヒリ、スム〈にひりずむ〉↓ 9 、 4 、 6 、 6 、 反ユダヤ主義〈はんゆだやしゅぎー P120 1 つ」 11 ( 0 anti-Semitism 、、、 Antisemitismus 特に、キリスト教徒がローマ帝国に対して行った善 nihilism 、、、 Nihilismus ナチズムに代表されるユダヤ人を迫害する思想。 悪の価値観の逆転を指す。 「すべてのものは無価値である」とする考え方。既ニーチェはユダヤ教・キリスト教のルサンチマンを 批判したが、反ユダヤ主義には懐疑的であった。 存の価値体系や権威の意味や根拠をすべて否定し、 奴隸道徳〈どれいどうとくー品、 6 、とする立場。 絶対的に正しいものなど存在しない slave mo 「 ality 、、 SkIavenmo 「 al 強者への怨恨感情 ( ルサンチマン ) によって成立す 『悲劇の誕生』〈ひげきのたんじようー 8 the Bi 「 th of T 「 agedy 、、 die Gebu 「 t de 「 T 「 agÖdie る弱者の道徳。自分たちを打ち負かした強者を「悪」『人間的、あまりに人間的』 〈にんげんてき、あまりににんげんてき〉↓ - 1872 年発行。論壇に対するニーチェの実質的な と見なし、自分たち ( 敗者 ) を善としたうえで、「よ 工 uman, AII T00 工 uman 、、 MenschIiches, AIlzumenschliches 処女作。おけるアポロ的要素をディオニュソス的要 い行い」「悪い行い」についての基準が決められる。 1878 年、 1879 年に、Ⅱと相次いで出版さ素を対置させ、ギリシア悲劇の新しい読み方を提示 ニーチェは、キリスト教道徳がその典型であると主 した。 れたニーチェの著作。形而上学、宗教、芸術、道徳 張した。 などをテーマにした批判的な短い文章 ( アフォリズ 対〕君主道徳 ム ) の連続で展開する。Ⅱは、『さまざまな意見とプ一フトン〈ぶらとん〉・ 8 Plato 、 箴 = 一戸と『漂泊者とその影』の合本。 前 427 年頃 5 前 347 年頃。古代ギリシアの哲学 ・ 0 、 2 者。ソクラテスの弟子で、アリストテレスの師。現 象界とイデア界、感性と理性、肉体と霊魂とを区別 knowledge 、 E 「 kennen し、相反するニつの原理であらゆるものを説明する 「これは何か ? 」を知る意識の働き。また、そうし ナチズム〈なちずむー P120 Nazism 、、 Nazismus て知られた内容のこと。認識のメカニズムを追求す立場 ( ニ元論 ) をとった。物事の本質にはイデアが あるとし、西洋哲学の大きな流れの源となった。 ることは哲学にとって重要なテーマ。ニーチェは 1920 年に誕生したナチス ( ナチ党 ) の政治思想 や支配体制のこと。ヒトラー総統の下、ファシズム個々の認識は遠近法的思考に基づく解釈に過ぎず、 認識の内容はカへの意志に基づく欲望に由来する、 ( 全体主義 ) にもとづく独裁政治を押し進め、アー とした。 リア人種の優越性をうたいユダヤ人を迫害した。 0 な行 は行 158

10 8 ルサンチマン〈るさんちまん〉↓、 4 、 alt 「 uism 、 Altruismus 「 essentiment ( 仏 ) 、、 自分の利益や欲望よりも他人の利益を優先する考え敗者が勝者に対して抱く怨恨感情のこと。敗者は、 無神論〈むしんろん〉・ 2 atheism 、、 Atheismus 方。親切、博愛、隣人愛に通じるが、ニーチェはこ ルサンチマンから相手を「悪」と規定し、その対極 神は存在しない、とする立場。ニーチェはときに無れを畜群道徳であるとした。 にある自らを「善」とする。ニーチェは、「ローマ 神論者といわれるが、彼は「神は死んだ」と神の存 帝国時代に迫害されていたキリスト教徒はルサンチ マンから、貧しいこと、弱、 在を前提した発言を ( 象徴的とはいえ ) くり返して隣人愛〈りんじんあい〉↓。 8 、 142 しことが尊いとい一つ道・徳 しし・カ十 / し neighbor-love 、、 NächstenIiebe おり、妥当な指摘とは、 観が生まれた」と主張した。ルサンチマンとは要す 自分の欲望を抑制し、人のために奉仕すること。ニー るに、逆恨み、負け惜しみによって自らを正当化し チェはこれを自然な人間らしさに反する感情であようとする感情のこと。 物自体〈ものじたい〉↓ thing ゴ itself 、、 Ding an sich 畜群本能に由来するとして批判した。また、隣 カント哲学では、人間の認識には限界があり対象人愛は自己愛が足りないものが自分を愛させようとローマ帝国〈ろーまていこく〉↓、 6 8 や現象自体は認識できないとする。物自体とは、認することにすぎないとも指摘した。 the Roman Empi 「 e 、、 das 「Ömische Reich 識できない対象の本質的な実体、本体のこと。 古代ヨーロッパに君臨した帝国。紀元前 8 世紀頃の 都市国家に始まり、王政、共和制を経て紀元前年 倫理学〈りんりがく〉↓ ethics 、、、 Ethik に帝政となる。 152 世紀の最盛期は、ヨーロッパ 人間がお互いの間で行う行動についての善・悪を問 全土から北アフリカ、ブリテン島に至るまでの大帝 国になった。 し、規範、原理、道徳を追究する哲学。 ルー・ザロメ〈るー・ざろめ〉・、掲 ワークナー〈わーぐな↓・秬 欲望〈よくほう〉・ P138 、、、 Lou A. Salomé desi 「 e 、、 Trieb, Ve 「 langen 、、 W. R.Wagne 「 足りないこと、ものを満たそうとして「ほしい」「し ニーチェが一目惚れをし、失恋した女性。弟子とし ( 1813 5 18 8 3 ) ドイツの作曲家、音楽家。 たい」と思う感情。欲望を満たすための行動はキリスての彼女の才能をニーチェは手放しでほめている。 音楽、劇、文学を融合する総合芸術を作り上げるこ ト教では悪とされるが、ニーチェにとっては欲望こそ自 後に、彼女との交流は、妹エリーザベトら家族とのとを目指し、ヨーロッパ音楽に絶大な影響を与えた。 然な人間の姿なので、肯定されるべきものである。 不和を招くこととなった。 バイロイト祝祭劇場を設立。ニーチェは初めワーグ ナーに心酔するが、やがて権力者におもねる姿に失 望し離れていった。 里目一〈りそう〉↓ ideal 、、 ldeal 現実に対して「あるべき」または「本質的な」姿の 我思う、故に我あり〈われおもう、ゆえにわれあり〉 こと。ヨーロッパ社会では禁欲主義的な生き方が理 4 想とされが、ニーチェはこれを畜群本能から生まれ 一 think he 「 e → 0 「 e 一 am. 、、 CogitO e 「 go sum. ( ラテン ) た一つの考え方とし、世の中の理想に最高の価値を デカルトの有名なフレーズ。この世のすべての存在 置くことの意味を否定した。 を疑ったとしても、考えている自分の存在だけは疑 - んない という意味。デカルトの思索は、哲学的に 自我の存在を基礎づけたとされ、以降の西洋哲学の 底流となった。 や・ら・わ行 ま行 759

奥付

監修者紹介 監修・白耳 : 春 ) 豸 Shiratori Haruhiko 青森市生まれ。ベルリン自由大学で哲学・宗教・文学を学ぶ。哲学と宗 教に関する解説書の明快さに定評がある。主な著書に「ビジネスマンの ための「聖書」入門」「頭がよくなる思考術』「超訳ニーチェの言葉」「生き るための哲学ニーチェ「超」入門』 ( 以上、ディスカヴァー・トウ工ンティ ワン ) 、「考えすぎない思考術成功体質になる 24 の習慣」 ( 宝島社 ) 、「仏 教「超」入門」 (PHP 文庫 ) など多数。 別冊宝島 1729 号 まんがと図解でわかる ーチェ 2011 年 3 月 15 日発行 第蓮見清一 創刊人 石倉笑 共同発行人 藤澤英一 ”宇城卓秀 編集長 編集し宮下雅子 神崎宏則 編集協力 小田立子 、日下淳子 : : 平瀬菜穂子 取材・文 ー乙野隆彦 日下淳子 遠藤嘉浩 表紙デサイン ( 株式会社遠藤デサイン ) 遠藤嘉浩、遠藤明美 本文デサイン 桜沢敬樹、横須賀智 ( 株式会社遠藤デサイン ) 加茂 表紙イラスト まんが nev 菌うさぎ 章扉イラ訃・人物カット 写真 アフロ = , ーし石井原 表紙ロゴ作成 ミ井出創 販売責任者 ~ = = 、。伊藤俊之 制作責任者 発行所 株式会社宝島社 〒 102-8388 東京都千代田区一番町 25 番地 電話【営業】 03-3234-4621 【編集】 03-3239-0400 http://tkj.jp 郵便振替 00170-1-1708 四 ( 株 ) 宝島社 印刷製本 株式会社リーブルテック OTAKARAJIMASHA 201 1 Printed in Japan 乱丁・落丁本はお取り替えいたします 本誌の無断転載を禁じます。 おもな参考文献 「現代思想入門」 ( 仲正昌樹ほか、 PHP 研究所 ) 、「この哲学者を見よー名言でたど る西洋哲学史」 ( ピエトロ・エマヌエーレ著、泉典子訳、中央公論新社 ) 、「ツアラ トウストラい旧 ( 手塚富雄訳、中央公論新社 ) 、「偶像の黄昏反キリスト都 ( 原佑 訳 ) 、「権力への意志上・下』 ( 原佑訳 ) 、「曙光」 ( 茅野良男訳 ) 、「善悪の彼岸道徳 の系譜」 ( 信太正三 ) 、「ツアラトウストラ上・下』 ( 吉沢伝三郎訳 ) 、「人間的、あ まりに人間的リ ( 池尾健一訳 ) 、「人間的、あまりに人間的旧 ( 中島義生訳 ) 、『悦ば しき知識」 ( 信太正三訳、以上、ニーチェ著、ちくま学芸文庫 ) 、「事典哲学の木」 ( 講 談社 ) 、「超訳ニーチェの言葉」 ( 白取春彦編訳、ディスカヴァートウ工ンテイワン ) 、 「ツアラトウストラからのメッセージ」 ( 湯田豊、角川叢書 ) 、「哲学の歴史 1 ~ 12 」 ( 内 山勝利ほか、中央公論新社 ) 、『ニーチェ』 ( 工藤綏夫、清水書院 ) 、「ニーチェ」 ( 貫 成人、青灯社 ) 、性きるための哲学ニーチェ「超」入門」 ( 白取春彦、ディスカヴァー トウ工ンテイワン ) 、「ニーチェ入門」 ( 竹田青嗣、ちくま新書 ) 、「ニーチェの妹工リー ザベト - ーーその実像」 ( 恒吉良隆、同学社 )